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キユーピーアヲハタニュース

2012/8/30 No.58

★学会発表

<卵白由来の新素材の研究>

乳酸発酵卵白は食品の風味や食感を向上させます
○レトルト食品の加熱臭を低減
○保水力で焼き菓子がしっとり

8月31日、日本食品科学工学会第59回大会(札幌)にて発表
 キユーピーは卵白の有効活用について研究を進めています。これまでに卵白を乳酸菌で発酵させた「乳酸発酵卵白」が食品素材として利用しやすく、さらにヒトでの摂取試験により血中コレステロール濃度を低減することを見出しています。
 今回は、「乳酸発酵卵白」を食品に配合した場合の風味および物性への影響を調査しました。その結果、レトルト食品を製造した場合には加熱臭を低減すること、焼き菓子はしっとりとして口どけの良い食感になることがわかりました。
乳酸発酵卵白
1.レトルト食品の風味への影響
 調理した牛丼の具に乳酸発酵卵白を2%または5%添加し(対照品は未添加)、アルミパウチに入れて121℃、40分間殺菌した。官能試験で風味を評価した結果、乳酸発酵卵白の添加量に応じて風味が向上していることがわかった。
 また、香気成分を機器分析したところ、加熱臭をもたらす物質の量が乳酸発酵卵白の添加量に応じて減少していた。この結果から、乳酸発酵卵白は食品を加熱する時のにおい物質の発生を抑制し、レトルト食品の風味を向上させることが示唆された。

牛丼(イメージ)

2.焼き菓子の食感への影響
 乳酸発酵卵白を3.2%添加した焼き菓子(ブッセ)を焼成し(対照品は未添加)、4日間の冷蔵保存後に、しっとり感や口どけ等の食感を官能試験で評価した。その結果、乳酸発酵卵白を加えた焼き菓子は柔らかさや口どけの良さ等の食感に優れていることがわかった。
 また、焼き菓子の水分量を測定したところ、乳酸発酵卵白添加品の水分は対照品に比べて高くなっていた。この結果から、乳酸発酵卵白の保水効果が焼き菓子の食感を向上させていることが示唆された。
ブッセ(イメージ)

 キユーピーは、今後も乳酸発酵卵白の機能性の研究を継続し、食品のおいしさや健康に役立つ卵白の可能性を追求していきます。
1.レトルト食品の風味への影響
<試験方法>
 下記のフローチャートに従って牛丼の具をレトルト殺菌し、風味を官能試験および機器分析によって評価した。
牛肉、醤油、鰹節エキス、食塩、上白糖、水
 ↓
加熱 (鍋)
 ↓
水分補正(乳酸発酵卵白 2%または5%添加。対照品は水のみで補正)
 ↓
アルミパウチに封入し、殺菌
(121℃×40分)
 ↓
①官能試験:専門パネル6名 対照を0点とした7点法(−3点〜+3点)
②香気成分分析:ヘッドスペース SPME-GC/MS法 測定温度60℃
<試験結果>
 ①官能試験
   図1のように、乳酸発酵卵白の添加量に応じて加熱に伴う好ましくない臭気が抑えられ、
   風味が向上していることがわかった。

図1.乳酸発酵卵白を配合したレトルト食品の風味(官能試験)
 ②機器分析
   図2,3のように、加熱臭の原因となる3-methyl butanal、2-ethyl furanが乳酸発酵卵白の添加量に応じて
   減少していることが分かった。
図2.レトルトした牛丼の加熱臭の機器分析結果(3-methyl butanal)と図3.レトルトした牛丼の加熱臭の機器分析結果(2-ethyl furan)
 これらの結果から、乳酸発酵卵白は食品を加熱する時のにおい物質の発生を抑制し、レトルト食品の風味を向上させることが示唆された。
2.焼き菓子の食感への影響
<試験方法>
 ○配合
  試験品 対照品
100 100
薄力粉 100 100
上白糖 80 80
起泡性乳化油脂 20 20
ベーキングパウダー 2 2
10
乳酸発酵卵白 10
※試験品中の乳酸発酵卵白は3.2%となる
○フローチャート
原料混合
 ↓
絞り (20g/1個)
 ↓
焼成 (220℃×6分)
 ↓
冷蔵保存 (4℃×4日間)
 ↓
①官能試験:専門パネル6名 対照を0点とした7点法(−3点〜+3点)
②水分量の測定:Computrac Moisture Analyzer
<試験結果>
 ①官能試験
   図4の通り、乳酸発酵卵白添加品はしっとり感や口どけの良さ等の食感が対照品に比べて高い評価になった。
図4. 焼き菓子の官能試験結果
 ②水分量の測定
   図5の通り、乳酸発酵卵白添加品は対照品に比べて水分量が高いことがわかった。
図5. 焼き菓子の水分量の測定結果
 これらの結果から、乳酸発酵卵白は焼き菓子の水分を保持する機能があり、しっとり感や口どけなどの食感を向上させることが示唆された。
■参考:乳酸発酵卵白に関する過去の研究
乳酸菌で発酵させた卵白は血中コレステロール濃度を低減します
 健常成人男性88名(血中総コレステロール濃度は204〜259mg/dL)を対象に、「乳酸発酵卵白」の摂取による血中コレステロール濃度への影響を調査しました。
 卵白たんぱく質の量が4g、6g、8gとなるようにドリンクに「乳酸発酵卵白」を配合し、1日1回、8週間にわたって摂取し、摂取開始前、摂取開始4週後、摂取開始8週後の3回、血中コレステロール濃度を測定しました。
 初期値を0として変動を調べた結果、「乳酸発酵卵白」8g食の摂取により、血中総コレステロール濃度に有意な低下が認められました。
図2. 血中総コレステロール濃度の変動