研究・調査

22/06/02

No.52

野菜料理の「多様性」と「頻出性」が貢献

野菜料理を親子で共同調理すると、子どもの心理的発達に好影響を及ぼすことが判明

6月4日(土)~5日(日)開催の日本食育学会で発表

 キユーピー株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役 社長執行役員:髙宮 満、以下キユーピー)は、学校法人白百合女子大学(学長:髙山 貞美)名誉教授・生涯発達研究教育センター特別研究員の田島 信元先生と共同で、野菜料理※1を親子で共同調理することによる子どもの心理的発達への影響について、親による4段階評定の質問紙への回答に基づき調査研究を行いました。これによると、野菜料理を親子で一緒に調理する経験は、非認知能力を中心とした子どもの心理的発達に肯定的な影響があることが示唆されました。この研究結果について、2022年6月4日(土)~5日(日)の二日間にわたり開催される「第10回 日本食育学会 学術大会※2」にてポスター発表を行います。

※1 「野菜料理」には、生野菜サラダ、温野菜サラダ、ポテトサラダ、あえ物、炒め物、煮物、スープ、麺類、ご飯もの、卵・肉・魚などが入った料理も含む。

※2 「第10回 日本食育学会 学術大会」(オンライン開催) https://shokuiku-gakkai.jp/taikai2022/

「野菜」の有無がポイント。心理的発達スコアで有意差あり

 3歳から12歳までの子どもを第一子にもつ親(n=793)を対象に、調査時点から1年間を遡り、野菜料理の親子共同調理経験群(n=420)、野菜料理以外の親子共同調理経験群(n=133)、親子共同調理未経験群(n=240)の3群に分け、心理的発達スコアを評価しました。スコアを検証すると、野菜料理の親子共同調理経験群は、その他の群と比較して心理的発達スコアの全6項目(自己統制力、主張力、協調性、自己肯定感、論理的・集中的態度、好奇心)が有意に高いことが分かりました(グラフ1参照)。また、野菜摂取量も有意に多いことが分かりました。

グラフ1 子どもの心理的発達スコア(全体)

「洗う」「ちぎる」などを子どもに任せると、親子の“行動”と“満足感”がアップ

 野菜料理の親子共同調理経験群を、子どもの調理工程への関与度別に解析したところ、「洗う」「ちぎる」などの調理工程を子どもに任せている群と親子で一緒に実施している群は、親が実施している群に対して、子の積極的な行動や親の協調的な働きかけなど、親子の行動と満足感において有意に高いスコアを示しました(グラフ2・グラフ3参照)。

グラフ2 親子の行動と満足感のスコア(野菜を洗う)

グラフ3 親子の行動と満足感のスコア(野菜をちぎる)

色・形・香り、野菜の種類の多さや多様な調理工程が貢献

 「野菜」とひとくちに言っても、その種類は非常に多く、色・形・香りなどもさまざまです。また、野菜を使った料理も多岐にわたり、健康的な食生活という観点からも食卓への出現頻度が非常に高いのが特徴です。これらの特徴が、子どもの心理的発達に野菜料理の共同調理経験が好影響を与える要因である、と推察できます(図1参照)。

図1 野菜共同調理の心理的発達への影響因子の考察

 キユーピーグループは、2030年にどうありたいかをまとめた「キユーピーグループ2030ビジョン」を策定しています。その一つに、「子どもの笑顔のサポーター」を掲げ、未来を創る子どもの心と体の健康を応援しています。今後も、調査研究にとどまることなく、行動変容につながる取り組みを積極的に進めていきます。

【共同研究者・田島 信元先生からメッセージ】

             

田島 信元先生
白百合女子大学・東京外国語大学名誉教授/白百合女子大学 生涯発達研究教育センター特別研究員/(一社)生涯発達支援研究所代表理事・会長

今回の研究では、野菜料理を親子で一緒に調理した経験があるグループは、野菜料理以外の共同調理経験や共同調理未経験のグループと比べて、非認知能力を中心とした子どもの発達や野菜摂取量の増加が見られました。また心理的発達においては、ほとんどの指標にプラスの関連を示すといった普遍的な影響が示唆されました。
親子による共同調理体験の心理的発達における重要性を追認しただけでなく、野菜料理という調理対象の重要性が示唆されたという点で、本研究の意義は大変大きいものがあると考えています。


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